ワナビ坂

オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな このはてしなく遠いワナビ坂をよ…

「リボンの棋士 ガール・ミーツ・ゲーム」の話

小説家になろう」に平河ゆうき名義で「リボンの棋士 ガール・ミーツ・ゲーム」掲載しています。
 
 
角川つばさ文庫小説賞で2次選考通過した作品です。
ちなみに他の児童文学系の賞にも2つほど出しましたが、いずれもおそらく1次落ち。
つばさ文庫がレーベルカラーとしても合っていたんだろうなあ、と思うのですが、
最終まで進めなかったのはつくづく残念でした。

もともと、将棋を題材になにか書きたいという気持ちは数年前からあったのです。
最初はプロ棋士になるための最大最後の難関である奨励会三段リーグを舞台にして、
男同士の戦いを女性にも読めるように書いてオレンジ文庫あたりに応募するか…などと考えていました。
そこで参考にしようと奨励会を描いた名作と名高いノンフィクション「将棋の子」を読んだのですが、
これがもう圧倒的な面白さ。

 

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

 

 

一読者としてはめちゃくちゃ感動したのですが、この現実に勝てるようなフィクションは絶対に書けない、とあきらめました。
じゃあライトな感じで将棋の世界を書けないかな…プロを目指してがんばる小学生の話とか…と考えていたところで、
りゅうおうのおしごと!」1巻発売ですよ。

 

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

 

 

んーーーこれでもう少なくともライトノベルを狙うのは無理だな! 
じゃあ初心に返って児童文学で行くか! つばさ文庫・青い鳥文庫・みらい文庫あたりの路線で!
と、書き始めたのが「リボンの棋士 ガール・ミーツ・ゲーム」になります。
 
りゅうおうのおしごと!」を読んだうえで、差別化することには気を配りました。
読者層は違うとはいえ、設定や展開がかぶるのは良くないと思ったので。
とりあえず、師弟関係ではなくライバル関係をメインにすると決めて、どんな2人をメインキャラにするか。
 
主人公・朝井祈理のキャラクターはわりとすぐに決まっていました。
女子の一人称がどうも今の児童文庫の流行らしい。しかしもはやいい歳したおっさんの僕に普通の女子小学生の一人称で書けるか?
…「普通の」女子小学生じゃなければ書けるんじゃないか? と。
基本的にはですます調のモノローグにしつつ、感情が高ぶると関西弁になるというのは、吉本新喜劇の未知やすえ姐さんがモデルです。
作中であれほど祈理が怒ることはありませんでしたが、そのぶん祈理の母親が怒る場面がやすえ姐さんっぽくなりました。
あとは以前書いた「もし腐ったお嬢様が~」で、人を食ったような語り口のお嬢様一人称を書いた経験も生きたと思います。

では主人公に相対するライバルはどんな子にするか。
そのころはタイトルも決めていませんでしたし、ボーッと書店をぶらぶらとしながら考えていたのですが、
ちょうど目に留まったのが手塚治虫リボンの騎士」でした。

 

リボンの騎士 手塚治虫文庫全集(1)
 

 

コレだ!となりましたね。
タイトルはもうずばり「リボンの棋士」にするか。
となれば、サファイアっぽいボーイッシュな女子がライバル(というより、もう1人の主人公)になるな…と。

そこから、描きたい場面が自然に浮かんできて、展開の大筋も決まっていきました。
とりあえず、
・お嬢様っぽかった主人公が関西弁丸出しで勝負に必死になる
・一方で、ボーイッシュだったライバルがお姫様のような格好をする羽目になり、主人公と対局する
という状況はなんとかして描きたかったので、アドバイスをもらいながら展開を詰めていったのでした。
 
「将棋&PK戦」のアイディアは、昔「探偵!ナイトスクープ」で将棋&ボクシングを見て大笑いしたから出てきたのだと思います。
ナイトスクープを見た当時は将棋に興味持っていなかったんですけど、先崎九段だったんですね。
 
あとは将棋会館に行ったり、JT杯の会場へ行ったりした経験も生きていると思います。
やはり取材は大事だなあ、と痛感した次第。イメージできませんもんね、なかなか。
 
キャラクターについていえば、もう1人の主人公と言っていいであろう晶の「男の子っぽさ」のバランスには、けっこう気を遣った気はします。
男の子っぽいとはいえ、性同一性障害を思わせる感じにすると重大すぎてお話の主題がどこかに行ってしまう。
一人称が「ぼく」「おれ」っていうのは流石にやりすぎなんで嫌だ。
性別問わず小中学生に読んでほしいので、あんまり百合っぽくするわけにもいかない。
恋愛要素をあまり出しすぎて、小6女子が男子をめぐってドロドロに争うみたいな話にもしたくはない。
お姫様の格好をしたときも、昔の少女漫画みたいに「こ、これがあたし…?」ってなるのも嫌だし、すごく恥ずかしそうに赤面するというのもあざとすぎて嫌だ。
いろいろ考えた結果が今の晶で、自分ではかなり気に入っています。
 
浅倉要四段は特定のモデルはいないんですが、あえていえば「ヒカルの碁」の塔矢アキラをイメージしていたかな、という気はします。
でもそこまでくそまじめというわけではなくて、お笑いが好きだったり祈理や晶を茶化したり、というお茶目な面を強めに描いたつもりであります。
 
宇佐美玉緒さんは里見香奈女流五冠を少しイメージしたんですが、
今となっては藤井聡太四段が女の子だったら、みたいな雰囲気のほうがしっくりくる気がします。
(書いてる当時藤井四段はまだ三段でプロ入り前でしたが)

 

女流名人倉敷藤花里見香奈 好きな道なら楽しく歩け

女流名人倉敷藤花里見香奈 好きな道なら楽しく歩け

 

 

斯波和臣名人は言うまでもなく羽生善治三冠がモデルです。
よく読み返すと斯波さん、作品内ではただの一言も台詞がないんですよね。
なのに謎の存在感があるのは、完全に将棋界における羽生三冠の圧倒的存在感があるからこそなんだろうと思います。

 

 

自分的にはこれまで書いた中での最高傑作なんじゃないかな…という気はしているのですが、うまくいきませんでしたね。
藤井四段ブームがあってもダメだったので、賞への応募はあきらめました。
1人でも多くの方に読まれるために、「小説家になろう」以外のサイトへの掲載も考えています。
本来のターゲットである小中学生に読まれるのが理想なんですけど、ネットだけでは厳しいのかなー。