未来の挑戦者へ 第10回角川つばさ文庫小説賞一般部門金賞 平河ゆうきさん
未来の挑戦者へのメッセージということで、賞への応募を検討している方に向けて自分の経験から何か役立てば…と考えて書きました。
伝えたかったのは、
①試行錯誤を重ねることで見えてくるものもあるかもよ~
②縁遠いジャンル・題材でも応募すると決めたら研究したほうがいいよ~
という2点です。別に児童文庫の賞に限ったことではなく、です。
以下、字数の関係もあって書ききれなかったことをいくつか。
①については、書いているとおり第5回で2次選考を通過できて、児童向けに適性あるのでは?と自覚できたことが大きいです。
第5回に応募した作品は将棋を題材とした『リボンの棋士 ガール・ミーツ・ゲーム』なんですが、こちらを書くまでにも紆余曲折ありました。
当時とにかく将棋の話を書いてみたい、という思いがあったんですが、
ライトノベルでは『りゅうおうのおしごと!』を超えるのはまず無理。
では一般文芸で奨励会を舞台にした話を書けないか…と『将棋の子』『オール・イン』といったノンフィクションを読むと、あまりに現実が壮絶なのでこちらも私ごときが書くのは無理ィ!と痛感しました。
ここでそもそも将棋の話を書くこと自体をあきらめる、という選択肢もありました。
しかし、あきらめずに小学生を主人公とした児童向けならいけるのでは…と考えた過去の自分を褒めてやりたい!
100%勝てない勝負は避けつつ、わずかでも勝機が見える場を探すことは大事なんじゃないですかね…。
②は当たり前といえば当たり前なんですけど、まず、いわゆるカテゴリーエラーについて。
例えば児童文庫の賞に猟奇殺人の話を応募する、みたいな無謀なことはさすがにほとんどの方はやらないと思います。
ただ、実際にそのジャンル、もっと言えばレーベルカラーを研究まではせずに応募する方はけっこういるのではないかと。私自身もそうでしたし。
『アイドルの中の人』を女性向けライト文芸の賞に応募したとき、1次選考通過止まりだったんですよね。
そのレーベルの先行作品を読みもせずに応募した結果です。正直、改稿が面倒だった…。
ちゃんと先行作品を読み、傾向を研究してちょっとした描写や雰囲気まで考慮して改稿していれば、違った結果もあったかも…と今になって思います。
それから、経験ゼロの題材でもなんとかなるかもしれないということ。
そりゃ自分が心から好きな題材の方が書きやすいでしょう。でも人間は普通に暮らしていても、そういくつも好きなものを持てないと思います。
書くと決めたら勉強して、興味の幅をなんとか広げるしかない。そこは先行作品の影響もあるでしょう。
今回受賞した『凸凹バドバード』はバドミントンの話ですが、私はバドミントン経験ゼロ。
なので参考にするために、まずは女子バドミントン漫画『はねバド!』を読みました。
この『はねバド!』がめちゃくちゃ面白かったことが幸運でした。面白すぎてバドミントンが好きになる→執筆のモチベーションも上がるという好循環に入れたと思います。
『はねバド!』で描かれる試合は基本的にシングルスがほとんどなのですが、ダブルスも1試合ながら濃く描かれていたことも良かった。ダブルスを描きたかったので、綾乃・理子ペアVS橋詰・重盛ペアの試合は非常に勉強になりました。
私にとっては橋詰英美さん(↑の8巻表紙になっているメンタルよわよわガール)が幸運の女神ですよ、本当に…。
実力はあるのに、どうしても受賞に至らない方が大勢いるのは知っています。自分が報われたからこそ、他の方にもなんとか報われてほしい。
「とりあえず応募してみる」という段階を越えて本気で受賞を狙うのであれば、面倒がらずにやれることを全部やってみましょう!