角川つばさ文庫『くいなちゃんはゾンビ!』発売から1ヶ月が経ちました。お手に取ってくださった方、ありがとうございます!
そろそろ内容について踏み込んだ話を書いてみたいと思います。
ネタバレを含むところもありますので、既に読んだ方か、ネタバレを気にしない方のみ、続きをお読みいただければ!
『くいなちゃん』を書くにあたって、ゾンビもので行こう!と最初から考えていたわけではありません。
発想の原点は「昔の大映ドラマや韓流ドラマでありそうな定番のネタを使って児童文庫作品を書けないか?」というものでした。例えば、貧乏な家庭の子が実は大富豪の娘だった!みたいなやつです。
いろいろ調べたうえで、「事故で数年間意識不明だった子が目覚めて、再び学校に通う話」はどうかな? と考えました。『35歳の少女』というドラマがありましたが、そんな感じで…と。
ただ、そのままやったとして小中学生読者が楽しく読めるビジョンが見えてこなかったのです。そこでふと、もともと大好きなアニメである『ゾンビランドサガ』が頭に浮かびました。
意識不明ではなく、死んでしまってゾンビになった子が学校に通う話はどうだ…?
『ゾンビランドサガ』は、主人公の高校生・源さくらが、事故死した10年後にゾンビとして目覚めてアイドル活動するお話です。笑って泣ける良い作品で、こういうのを書くのが理想だな~と常々思っていたんですよね。
さくらたちはゾンビだとバレないようにするため学校等には通わず、アイドルへ全力投球。ならば、学校へ行く話とはかぶらない。
いけるんじゃないか?と思いました。
そこから、まずはゾンビ少女がヒロインの漫画『りびんぐでっど!』と『さんかれあ』を参考に読みました。
『りびんぐでっど!』のもなこは、学校に行きたい気持ちはあるけど基本的には登校しない。『さんかれあ』の礼弥は登校するエピソードもあるけど学校生活メインの話ではない。
どちらも、ゾンビ少女の学校生活をがっつり描いたわけではない。よし、新しい!いけるいける!と企画を提出したら好感触で、お話作りを進めることになったのでした。
後の話ですが、ある程度進んだところで『小学生ゾンビ・ロメ夫』の存在を知ってひっくり返りました。でもロメ夫は男の子だし、グロテスクギャグにするつもりはないし…ええやろ!と割りきって突っ走ることになります。
ゾンビもので行くと決めたはいいけれど、ゾンビ作品の世界は広大すぎる。そして私自身はゾンビランドサガこそ大好きなものの、ほかのゾンビ作品についてはほとんど無知。
まずはゾンビ映画をいくつか観るしかない!と思いました。しかし手当たり次第に観るのもどうかと考えて、いったん道標になりそうな本を探しました。
それがVtuber・ゾンビ先生としても活動されている岡本健先生の『大学で学ぶゾンビ学』と、友人がライターとして参加している『爆食!ゾンビ映画100』です。ゾンビ作品の流れを学びつつ、実際に観る作品をチョイスすることができて大変助かりました!
さらに岡本先生も友人も、『くいなちゃん』発売後はSNSで宣伝いただいて…感謝しております。
そうして観たゾンビ映画の中でも、特に『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『ウォーム・ボディーズ』に影響を受けましたね。
どちらもかなり明るめの作風で、こんなゾンビ作品があってもいいんだ!と思えました。
そして本格的にストーリーを考えていくことになったのですが…『くいなちゃん』は特にキャラクターとストーリーが不可分なので、以下、キャラクターについて語っていきます。
存美くいな
苗字は音読みするとゾンビになることから。名前は没になった企画の主人公からの流用です。
あとがきに書いているように、当初はお嬢様キャラで、しかも性格はクール寄りでした。が、最終的にはいろいろと普通寄りの子になりました。ゾンビであるという一点が強烈である分、そのほうが個性になった感があってよかったと思います。
くいなと頼人の関係は、女の子の時間が止まっているのに対し男の子は成長している…ということで『ゾンビランドサガ』『ジョジョの奇妙な冒険』の特定カップリングから影響を受けていますね。
あとゾンビや幽霊と関係の無いところで言えば『16bitセンセーション Another Layer』、ひいては児童文学の『トムは真夜中の庭で』なんかもあるでしょうか。
そう、ゾンビの女の子を主人公にすると決めた時点で、サポート役の男の子との変則的な関係性を描きたくなったんですよ! この機を逃すともう描くチャンスは無さそうだったので…!
そして年齢を除けば『エスパー魔美』の魔美と高畑さんみたいな関係だな~、という気もしています。
外見は、
・包帯キャラ
・髪が長め(ゾンビパワーでのアクション時にイラストが映えそうなので)
・瞳が赤い(ゾンビランドサガに倣って)
ということくらいしか決めていませんでしたが、からあげたろう先生が最高にかわいく描いてくれました!
若月頼人
苗字は川原泉の漫画『笑う大天使』若月俊介から。好きなんですよね…。名前は「〇人」にしたくて、いろいろ考えた末に「頼れる人」ってぴったりでイイネ!と思い、決めました。
ただ「ライトくん」と呼ばれるとどうしても『DEATH NOTE』の夜神月が頭をよぎるのでどうかな?と一瞬悩んだのですが、今のつばさ文庫の読者層は『DEATH NOTE』連載時に生まれてもないからええやろ!と自分にGOサインを出しましたね。
あとがきにも書いたとおり、執事キャラだった名残でかなりの万能になってます。上記のように高畑さん感もあるかも。
隠れた設定としては、歴史好きです。作中では伊達政宗の名前を出してることに加え、例のネタは小田原征伐時に仙谷秀久が陣羽織に大量の鈴を縫い付けたというエピソードから持ってきてるんですね~。つばさ読者さんにはマニアックすぎると思い触れませんでしたが…。
キャラクターデザイン完全にお任せしたのですが、なんでもできる美少年という印象ですばらしいです!
大日南桃
苗字と名前含めて、桃太郎でドンブラコと流れてくる「大きな桃」のもじりです。
くいながゾンビながらわりと普通な子であるぶん、友人は普通の人間だけど強烈なキャラにしたかったんですよね。その辺もあって『あずまんが大王』滝野智、『ペルソナ4』里中千枝、『ハイスクール!奇面組』宇留千絵、『名探偵コナン』鈴木園子といった、「やたら明るく元気な友人キャラ」のイメージが混ざり合ってます。
探偵キャラになったのは、完全にライブ感です…!
序盤でくいながゾンビだとバレるように話を組み立てていたら、いつの間にか探偵キャラに! ふしぎ!
外見は髪が短めであることくらいしか決めていませんでした。髪の色がピンクなのは、やっぱり名前からイメージしてデザインしてくれたのかな? ギターを弾くくいなとイェーイ!とやってるところのイラストが、本当にかわいい!
黒羽響夜
苗字も名前も、わざとらしいくらい吸血鬼っぽいイメージにしよう…とこうなりました。そう、吸血鬼なんですよね。あとがきにあるように岡林くん(仮)から、ものすごい出世ぶりです。
吸血鬼は担当編集様のアイデアで、そこから世界観の方向性が定まりました。ある意味でくいなの次に作品を決定づけたキャラクターといえましょう。
吸血鬼の少年キャラって児童文庫でも少女漫画でもめちゃめちゃいると思うんですが、性格はひねくれてたりミステリアスな傾向にある気がします。なので、スポーツ好きで明るくまっすぐないいヤツ(でも吸血鬼)、というほうが珍しくてイイと思い、性格付けしています。
栗農家の子になったのも、ライブ感ですね。だいたいライブ感でできています!
よく日焼けしたサッカー少年が翼を生やして月夜の空を飛ぶ、というイラストは良すぎてどうかしていると思いますッ。
黄泉津永遠&カクリコ
苗字は黄泉平坂(よもつひらさか)から。名前は不死っぽいイメージからなんとなく。
カクリコは幽世(かくりよ)のもじりです。
日常生活でくいなをサポートするのは頼人だけど、くいなをゾンビにした人物が頼人とは別に必要。ほなネクロマンサーか…というところまでは考えたものの、どんなキャラにするかは全く思いつかず。
あとがきに書いたように、いったん高校生のギャルで書きましたがしっくりこず、担当編集様の意見でマスコット的な幼くかわいい女の子にすることに。
当初は永遠の性格がカクリコみたいな守銭奴だったんですが、やはり永遠は純粋な子として、それと別に使い魔的な存在を用意することになりました。虫はどうかとアイデアを出していただいたのは、あとがきにあるように、からあげたろう先生です。本当にありがとうございます!
書いてるうちにカクリコが便利すぎるキャラに育ちましたね…。私、声優オタクなので自作のキャラクターの声優さんを毎回イメージしてしまうものの、キモいのでそれを表に出すことはないのですが…カクリコだけは脳内CVを叫ばせてください。
アメリカザリガニの柳原さんですッ!
完全に『ボンバーマンジェッターズ』のガングのイメージですわ…。
稲森光里
電撃能力者ということで、「稲光」からイメージした苗字と名前になりました。響きは稲森いずみっぽいですね。
後半のエピソードは事件を解決するお話にしよう…と決まり、農作物泥棒にするか~となったんですが、いまや防犯カメラの存在がお話作りにおいて本当に厄介。
世界観的に、なんらかの能力で防犯カメラを無力化できる人物を犯人ではどうか…透明人間?…いや電撃能力にするか、ゾンビに効かないという見せ場が作れるし!という流れでこうなりました。やっぱりライブ感!
ちょっとガラの悪い子ということで『ウマ娘プリティーダービー』のエアシャカールやエスポワールシチー、『ウマ娘シンデレラグレイ』のルディレモーノあたりをイメージしました。ウマ娘ばっかやな!
シリーズが続いたら、反省して再登場し、くいなたちに協力する姿を描けたらなぁ~と思っておりますよ。
そんなこんなで、紆余曲折ありつつライブ感で書き上げたのが『くいなちゃんはゾンビ!』でございます。
前作『泣き虫スマッシュ!』とずいぶん印象が変わったというコメントも目にしました。まあ担当編集者が変わった、というのもありますが…どちらかといえば『くいなちゃん』のほうが私本来の持ち味に近いと思っています。むしろ泣きスマのほうが細かいギャグを抑えていたというかね。小ネタだらけの作品を書いてライトノベルの新人賞に応募していた経験があったからこそ、『くいなちゃん』を書けたと考えています。
『ゾンビランドサガ』のほか、奇面組やらんまみたいな「男女問わず楽しめる学園もの少年漫画」っぽい作品をイメージしつつ書き進めたのですが、いかがでしょうか?
幅広いネタを取りこんで続けられる世界観だし、何より書いていて楽しいので、シリーズ化したいし長く続けたいです…。
何とぞ『くいなちゃんはゾンビ!』を応援よろしくお願いいたします!
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